サイドスリップは、ボードを進行方向に対して横向きにして滑り降りる技術です。
サイドスリップを覚えることには、
- かなり急な斜面でも安全に降りることができる
- この先停止したり、ターンをする時に必要な技術が身につく
といったメリットがあります。
斜面で立ち上がります。参考立ち上がり方
足首をゆるめ、ヒールエッジが雪面に食い込む角度を少なくします。
ボードが斜面下に向かって滑り始めます。この時、膝をゆるく曲げて遠くを見るようにします。
初心者に教えるときは?
初心者にサイドスリップを教える時「力を抜いて」「リラックスして」と言ってもなかなかできません。そこで、遠くを見ることを重点的に説明し、逆エッジを防ぐために、少しずつスピードを出す(かかとのエッジングをゆるめすぎない)ことをアドバイスしてあげてください。
斜面で立ち上がり、基本姿勢を再チェックします。
ヒールエッジに比べてトゥ側エッジのコントロールは少し難しいので、以下のコツを覚えておいてください。
- 拇指球を雪面に押しつけるようにエッジングの強さをコントロール
- レギュラーの人は左肩越し(グーフィーの人は右肩越し)に進行方向を見る
- 積極的に手を使ってバランスを取る(レギュラーなら右手を上げる)
またヒールエッジでのサイドスリップに比べて、よりヒザを柔らかく使う必要があります。
初心者に教えるときは?
基本姿勢を崩さないようアドバイスしてあげてください。フォールラインが見えないと、怖さから体を大きくひねることがありますが、そうするとノーズドロップしてしまいます。体をひねりすぎず、肩越しに(見える範囲で)進行方向を見るように伝えてあげましょう。トゥエッジのほうが急斜面で滑りやすいので「慣れたらどんな斜面も降りられるよ」と、自信を持たせてあげましょう。
サイドスリップ=横滑りで山を下りる技術を徹底解説
ここからはサイドスリップの原理から応用まで、さらに細かく解説していきます。
ヒールエッジのサイドスリップから練習しよう
どちらかというと、抵抗なく挑戦できるのはヒールエッジでのサイドスリップ。滑っていく方向(フォールライン)を向いて滑るので、無理のない姿勢で滑ることができます。
初めてのサイドスリップに挑戦雪面で立ち上がったら、足首、ヒザ、股関節を曲げて腰を落とし、両足均等に体重を乗せます。
参考スノボで「うまく立てない」「立つだけで疲れる」人は反転するか、つま先エッジをつかむ!
棒立ちになってしまう場合は、つま先を引き上げて足首を曲げます。
ヒールエッジを雪面に食い込ませて停止した状態をキープしましょう。 雪面にバランスよく立てたら、次のステップで練習してみましょう。
- 目線を遠くに送る
- つま先をゆっくり下ろすことでかかとのエッジングをゆるめる
- 滑りだしたら両手を軽く前に出しバランスをとる
気をつけたいポイントはいくつかありますが、①の「目線を遠くに送る」が最重要項目です。足元を見ると体の軸がずれて、重心がボードの真ん中からはずれてしまいます。
その点に気をつけてかかとのエッジングをゆるめると、ボードがずりずりと滑り始めます。滑りだしてからも、棒立ちにならないように、軽く膝を曲げるよう意識します。
リーンアウトを意識して安定したサイドスリップに
滑り出したら、バランスをキープするためにリーンアウトを意識しましょう。
リーンとはスノーボードで滑走する時の体の傾きのことです。その傾きに対してバランスをとる姿勢がリーンアウト。
ヒールエッジのサイドスリップでは、次の点を意識するとむりなくリーンアウトできます。
- 上体を少し谷側に倒す(手を前に)
- ふところを深くとる
ふところを深くとるには、おなかに軽くパンチをくらって「うっ」となった感じの姿勢を意識します。
沈み込みながら荷重すれば停止できます
サイドスリップの練習をするとき、「どこでも止まれる」ことを意識して練習してみてください。この先ターンの練習をするとき、サイドスリップの応用で停止する必要があるからです。
ヒールエッジでのサイドスリップから停止する時は、沈み込みながらかかとエッジにかける力(角付け)を増やしていきます。
最初は一度に停止しようとせず、何度かに分けて停止する練習をしてみてください。
Rumi's Advice「つま先を意識!」
止まってヒールエッジで立った状態ではつま先をしっかり引き上げましょう。サイドスリップで滑り出したいときには、つま先の引き上げを少しずつゆるめていきます。ただし、一気にゆるめると逆エッジで転倒する危険も。足首に緊張感を持たせたまま、つま先の引き上げを少しずつゆるめて、スルスルと滑るイメージです。止まるときには再びつま先を強く引き上げてエッジングを強めます。
トゥエッジのサイドスリップ
トゥエッジのサイドスリップはヒールエッジでのサイドスリップより、少しだけ難易度が上がります。
- トゥエッジのほうがなめらかに進みにくい
- 上体がねじれた姿勢で滑る必要がある
…といった点がその理由です。
雪面に立ち上がったら基本姿勢を意識します。そこから肩越しにフォールライン(注1)を見て、その方向に滑り出します。
つま先を持ち上げると、つま先エッジのエッジングが弱まり滑り出します。
トゥエッジ側のサイドスリップから停止する時は、低い姿勢になりながらつま先のエッジングを強めます。
注1……フォールラインは最大傾斜線ともいい、ボールを置くと転がっていくラインを指します。スノーボードで滑っていく方向です。
トゥエッジ側のリーンアウトは胸を張る意識で
トゥエッジ側でサイドスリップする時も、リーンアウトを意識したほうが安定します。胸を張り、少し背筋を伸ばす姿勢をとるとリーンアウトでき、安定して滑ることができます。
トゥサイドとヒールサイドに共通していえること
スノーボードにとってエッジは唯一のブレーキです。サイドスリップの練習の中でスピードを調節して、エッジングの感覚をつかんでおいてください。
雪面(斜面)に対してエッジを立てるとスピードが落ち、エッジの角度をゆるめるとスピードが上がります。
谷側のエッジがかかる「逆エッジ」には注意!
サイドスリップから初歩的なターンを練習するまで、つねにスノーボードの山側エッジを使ってすべります。
この時、谷側のエッジがかかると逆エッジ転倒につながります。怪我の原因にもなりますので、逆エッジには注意しましょう。
逆エッジ転倒を防ぐには?斜度がゆるいとかえって逆エッジがかかりやすいので、サイドスリップの練習はある程度斜度があるところでやったほうがいいでしょう。
また、スノーボードを選ぶときに、ロッカーボードやダブルキャンバーなど、逆エッジがかかりにくいボードを選ぶのもひとつの手です。
参考【スノボ】初心者のための板選び。プロやメーカーが勧める5本から選べば間違いなし!
また、逆エッジ転倒によるケガを防ぐために、正しいころび方を知っておくことも役に立ちます。
参考スノボの安全な転び方 | 怪我をしやすい手と頭を保護するコケ方を解説
つま先エッジが引っかかって前に転ぶときは「絶対に手をつかずにヘッドスライディング」を意識してください。
ヒールエッジがかかって後ろに倒れるときは「頭をあげて小さくなりでんぐり返る」イメージで。柔道の受け身を意識する、ともよくいわれます。
サイドスリップができたら次は木の葉落とし
サイドスリップは、さまざまなスノーボード技術の基本。ここから木の葉落としやスライドターン(ドリフトターン)につながっていきます。
初心者が1日でターンできるハウツー記事は、ちょっと長いですが以下にまとめました。スノーボードに行く直前のイメトレにも活用してください。
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主にスノーボードのプロ(稲川光伸氏や藤沼到氏など)に取材して作成しており、元プロスノーボーダーの渡部ルミが監修しています。
参考文献
『JSBAスノーボード教程』(2008-2019)山と渓谷社
『DVDでうまくなる!スノーボード初中級レッスン』(2006)実業之日本社
Rumi's Adviceは元プロスノーボーダーの渡部ルミによるミニコラムです。
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