「スノマガ」を作っている渡部と立石がタイムスリップして、スノーボードを始める直前の自分に会ったとしたら? 過去の自分には絶対に上手くなってもらわないと困るので、真剣に考えました。
2人の意見が一致した条件現在この条件に一致するボードは少なく、「ぜひこれで!」とおすすめできるのは次の3機種です。
過去の自分にすすめるならこの3本この記事では上記の3本の他に、目的別のおすすめ機種もピックアップ。初めてのボード選びに必要な知識も解説しています。
このサイトを作っている渡部ルミは元プロスノーボーダー。立石は雑誌『SnowBoarder』の元編集長です。
幅広いブランドを解説し、初中級向けおすすめモデルをピックアップした記事もおすすめです。
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僕たちが考える初心者が上手くなれる板とは?
写真は元デモンストレーターの稲川光伸さん。足下を支えているのはオーソドックスなオールラウンドボードOGASAKA CTです。
もし僕たちが、スノーボードを始める直前の自分に勧めるとしたら、このようにオーソドックスで、なおかつもう少し柔らかいボードになるでしょう。
その理由はいくつかあり、記事の中で詳しく説明していきます。
自動車免許を取るならマニュアル?
現在、自動車の免許を取る人の72%がオートマ免許で、28%がマニュアル免許(ソニー損保調べ)。僕たちは、クルマでいうなら「あえてマニュアル免許で行こう!」とすすめているわけです。オートマ車的なボードを選ぶ方法は、記事後半で解説しています。
オーソドックスなオールラウンドボードであること
スノーボードのテクノロジーが進歩するにつれ、さまざまな構造・形状が登場しました。その結果、現在ではボードのラインナップが複雑でわかりにくくなっています。
図はヨネックスのラインナップ(一部)ですが、初級レベルのオールラウンドボード「ネクステージ(NEXTAGE)」があり、そこからさまざまなスタイルに進んでいけるように考えられています。
いろんな考え方がありますが、スノーボードの最も重要な技術「ターン」をマスターするためには、オーソドックスなオールラウンドボードが最適です。
コスパがいいこと(お金は旅費に回したい)
スノーボードのブランドはたくさんありますが、最初の一本にはバートンやK2、ロシニョールなど国際的なメジャーブランドがおすすめです。
理由は2つあります。
- 品質が安定している
- 大量に作っているのでマイナーブランドより安い
「人と違う」というスペシャル感はないかもしれませんが、特に最初の一本であればコスパを重視して、間違いないボードを選ぶのが無難です。
もしボード代で何万円か節約できれば、スノーボードに行く旅費やリフト券代にあてることができます。
一回でも多く滑りに行けば、そのぶんスノーボードが上手くなります。
リセールバリューが高いこと(メルカリで高く売れる?)
どんなに選び抜いたとしても、初めての一本は「自分に合わなかった」と感じる可能性があります。上達すれば、すぐにそのボードを卒業してしまうかもしれません。
リセールバリューを考えた場合もメジャーブランドなら安心です。「メルカリで売ろう」となった時も、ある程度の値段が付きやすいからです。
バートン(BURTON) インスティゲーター(INSTIGATOR)
BURTON FLAGSHIP OSAKAを取材した時「カービングを覚えるためのクルーズコントロールチューンが施されている板」と説明してもらったのが、このインスティゲーターでした。
純粋なキャンバーボードではないのですが、キャンバーをベースにしたハイブリッド(ピュアポップキャンバー)で、ターンの練習にぴったりのモデルです。
価格も安く、上位機種と同じフロストバイトエッジという形状を採用し、アイスバーンでエッジが抜けにくいのも特長です。
K2 スタンダード(STANDARD) CAMBER
K2のスタンダード CAMBERは、非常にオーソドックスな初心者向けのボードです。しかしキャッチフリーチューンといってエッジの角度を引っかかりにくく調整しているため、逆エッジの心配が少なく、乗りやすいモデルです。
反発はそれなりにしっかりしていて、踏んだ時に素直に反応してくれます。ターンをマスターして上達したい人におすすめの一本です。
このスタンダードは「スノマガ」の立石が取材時に使っているボードです。撮影のためワンフット(後ろ足を外した状態)で滑ることが多く、素直なこのボードの特性が役立っています。
ナイトロ(NITRO) デマンド(DEMAND) LTD CAM-OUT
ナイトロのデマンドにはキャムアウト(CAM-OUT)とガルウイング(GULLWING)の2種類があります。ターンをマスターするなら、迷わずキャムアウトをおすすめします。フレックス・トーションは柔らかく扱いやすいボードで、キャンバーベースのハイブリッド形状です。
ここにあげた3つの機種はいずれも「ぜんぜん逆エッジにならない」とか「板が勝手にターンする」といった、魔法のボードではありません。
むしろ一定の技術がないと、ちょっと操作しにくいなと感じるかもしれません。
しかし僕たちが過去の自分にアドバイスを贈るとすれば「こういうボードに乗って、上手くなっておいてくれ」ということなのです。
記事後半では、なぜここにあげたボードがおすすめなのか? を理解するための知識を紹介します。
ツインチップよりディレクショナルを選ぶ
スノーボードを真上から見た形をシェイプといいます。
ツインチップというのは、シェイプが左右対称であることをさします。ノーズとテールの形がいっしょで、スタンスはそのまん中に設定されています。
一方ディレクショナルボードはノーズとテールが非対称で、進行方向に進むことをやや重視した形です。
スノーボードの総合滑走能力を競う「テクニカル選手権」という大会がありますが、出場選手は通常ディレクショナルボードを使用します。
つまり、ターンを中心とした総合滑走に必要な性能は、ディレクショナルボードが優秀ということです。そこで、初心者からディレクショナルボードで練習する方が、より確実にターンをマスターできます。
ボードの形状や種類については、以下の記事でさらに詳しく解説しています。
ロッカーもいいがキャンバーのほうが上手くなれる
スノーボードを横から見た形状をベンド(またはプロファイル)といいます。現在、ベンドの種類はものすごく多いのですが、ほぼ上の4種類のどれかをベースにしています。
また、初心者・初級者が選ぶとしたら主に以下の3つのどれかです。
- キャンバー
- ロッカー
- ダブルキャンバー(Wキャンバー)
少しだけ特徴を解説しておきましょう。
キャンバー
もっともオーソドックスな形状です。ボードの中央部が雪面から浮いているので、荷重をかけるとよくしなり、高い反発が得られます。
ロッカー
板の中央付近で雪面に接し、両端(ノーズとテール)が浮き上がっている形状です。エッジが引っかかりにくい特徴があります。
ダブルキャンバー
ボード中央部分をロッカーとし、両足の下に2つのキャンバーを配した形状です。ロッカーとキャンバーの間くらいだといわれることもありますが、この記事では「ロッカーに近い性能」と考えています。
キャンバーとロッカーのメリット・デメリット登録者数60万人近いYouTubeチャンネルの「SnowboardProCamp」が、同一機種のキャンバーボードとロッカーボードを比較しています。その動画では、以下のような結論を出しました。
メリット | デメリット | |
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ロッカー | ・ターンに入りやすい ・逆エッジになりにくい ・プレス系のグラトリがしやすい | ・高速で安定しない ・反発力が少ない ・正確性が低い |
キャンバー | ・高速・急斜面・ジャンプで安定している ・反発力がある ・正確性が高くコントロールしやすい | ・操作するのに慣れが必要 ・逆エッジになりやすい ・パウダーでの浮力は高くない |
これをざっくりまとめるなら「キャンバーボードは優しくはないけれど、乗りこなせば正確なターンができ、高速にも強い」ということになります。
逆にロッカーボードは「初心者のターン導入がラクで逆エッジになりにくいが、高速で安定しない」ということです。
どちらを選ぶかは人それぞれですが、上手くなりたい人はキャンバーボードでしょう。
SnowboardProCampは別の動画でカスタム(バートン)のキャンバーとダブルキャンバーを比較しています。結果は「ターンやオーリーでキャンバーが有利」でした。
フレックスとトーションは柔らかいものを選ぶ
フレックスは板を縦方向にたわませた時の硬さ、トーションは板をねじった時の硬さのことです。
一般にフレックス・トーションと、そのボードが得意とする速度域の関係は次の通りです。
フレックス・トーションが硬い | 高速で使いやすい |
フレックス・トーションが柔らかい | 低速で使いやすい |
そこで、初心者・初級者にとっては、フレックスとトーションが柔らかいモデルが使いやすいといえます。
フレックス・トーションはカタログなどに記載されている表示を見るのが確実です。
長さと幅は標準的な基準で選ぶ
スノーボードの適正な長さは、ざっくりいうと身長マイナス15cmがめやすです。
特に身長が高い人は、身長マイナス20cmくらいが適正で、身長150cmくらいの人であれば身長マイナス10cm程度が適正と考えてよいでしょう。
初めてのスノーボードは、この適正サイズに近いものを選んでください。
スノボードの長さや幅の選び方について、詳しい説明は以下の記事で解説しています。
スノボの板の長さは? 太さも含めてどう選ぶかを解説|関連記事
結局、適正サイズのオールラウンドボードに行き着く
ここまで、スノーボードの形状について触れてきました。
結局、初心者はどんな特徴を持ったボードを選べばいいのでしょうか? まとめると、
- ターンに適したディレクショナルボード
- しっかり反発するキャンバーボード
この2つの特徴をそなえた板=オールラウンドボードを選ぶのが「上手くなるための近道」といえます。
それを踏まえた上で、適正な長さの板を選ぶとベターです。
【目的別!】より幅広い初心者向けスノボ板選び
「スノーボード初心者の人がお店に来たら、やりたいことを聞いてみて『ちょっと楽しめればいいんです』ということならロッカーボードをすすめています。『上手くなりたい』といわれたら、柔らかめのキャンバーボードをすすめます」
これは、某有名ショップの店員さんから聞いた話です。
まさに正論で、年に一度スノーボードをちょっと楽しんで雪景色を漫喫したい人に「ガチで上手くなるボード」は必要ないかもしれません。
そこで、ここから後は「目的別にボード選びを考えたら?」というテーマで解説していきます。
痛いのがイヤ!そこそこ滑れればいい人はロッカー
僕たちが初心者の頃は「冬の間ずっと滑りたい」くらいの勢いで、暇さえあればガツガツ滑っていました。しかし、年に一度のんびりと滑りたいという人もいます。
そんな場合はロッカーボード(またはロッカーベースのハイブリッドやダブルキャンバー)がおすすめです。全体に板の反発が弱く、ハイスピードは苦手ですが、ターンの導入が非常にラクで、逆エッジ転倒もしにくい傾向があります。
ここではメーカーさんやプロライダーが太鼓判を押す、入門向けのロッカーボード・Wキャンバーボード(ハイブリッド含む)を紹介します。
ヘッド(HEAD SNOWBOARD) エニシング(ANYTHING) LYT
ヘッドスノーボードを取り扱うユーエスピージャパンの細野大輔さん(元プロです)がすすめてくれたモデルがエニシング。一見するとわからないのですが、実はトゥ側とヒール側のサイドカーブが違う設計で、特にヒールサイドターンがしやすくなっています。
ダブルキャンバーに似たハイブリッドキャンバーDCTという形状で、逆エッジになりにくく、ボードのコアには軽量な素材を使っています。ツインチップなのでグラトリも得意です。
デスレーベル(DEATH LABEL)ブラックフラッグ(BLACK FLAG) DW
デスレーベルの近藤勇二郎プロがすすめてくれたのがブラックフラッグ DW。近藤プロは「初心者はゆっくり滑るので、低速で扱いやすい柔らかい板にしよう」とアドバイスしてくれました。ブラックフラッグもかなり柔らかく、乗りやすい板です。
DW(DEATH WING)というのはダブルキャンバーに似た形状で、ターンのきっかけがつかみやすく、不要なエッジがかかりにくいのが特長です。
ヨネックス アクセ(ACHSE)
トリノオリンピック日本代表で、元プロの中島志保さんがすすめてくれたのはアクセです。このモデルはセンターのフレックスをかなり柔らかく設定し、初心者にも取り回しやすい設計に。しかもノーズとテールにカーボンリボンを入れることで、オーリー・ノーリーの反発力と、カービング時の安定性を確保しています。
ユニセックスのモデルで139cmから154cmまで幅広いレングスを用意しており、自分にあったサイズが見つかります。
とにかく安くまとめるなら型落ちを狙うのもあり
用具代をおさえて旅費にあて、少しでも多くスノーボードをしたい! という場合、激安モデルが気になるでしょう。
しかし、最初から激安に作られているボードを買うよりも、ちゃんとしたブランドの型落ちを狙うのが正解です。
去年モデル(今だったら2021-2022モデル)でメジャーブランドの型落ちであれば心配なく使えます。
1つだけ注意したいのは、上級モデルすぎて買い手が少ない板が激安になっているケース。ここで値段に釣られてはいけません! 最低限カタログで「どんな板か」を調べるか、できれば下のおすすめボードから選んでください。
ここでは、かなりお得感があるモデルをいくつかピックアップしてみました。
K2 スタンダード 2022モデル
この記事イチオシモデルのひとつ、K2スタンダード。素直なキャンバーボードで、スノーボードの基本を覚えるのにぴったりです。過年度モデルはかなりおトクです。
ナイトロ デマンド LTD CAM-OUT 2022
ナイトロのデマンド CAM-OUTも、もし旧モデルが残っていたら狙ってみてください。こちらもキャンバーを元にしたハイブリッド形状で、しっかり反発を感じて滑ることができます。
サロモン(SALOMON) ロータス(LOTUS) 2022(レディース)
女の子向けの入門ボードとしておすすめのロータスですが、旧モデルなら3万円前後で手に入ります。ディレクショナルツインのFlat Out Camberモデルで、ややフリースタイル寄りですが、オールラウンドに使えます。
ここまで読んで間違いのない板選びができたら一安心。ですが、滑りに行く前に簡単なお手入れをしておいてください。
スノボ板を買ったらまずやっておきたい「お手入れ」
スノーボード(とくにキャンバーボード)を買ったら、まずダリングをしておきましょう。有効エッジの外側部分はターン時に使わないので、この部分をヤスリで軽く丸めておき、不要なエッジの引っかかりを防ぎます。
スノーボード用のファイルも市販されていますが、100番のサンドペーパーを木片に巻き付けて使えば十分です。
また、初心者用ボードの多くはエクストルーデッドソールといって、ホットワックスがあまり染みこまない素材でできています。
ホットワックスをかけるメリットは薄いので、上の写真のような簡易ワックスを使用するのが効率的です。
それほど高い物でもないので、セットで買っておくと役に立ちます。
エクストルーデッドソールの手入れについて、詳しくは以下の記事で解説しています。
スノボ簡単ワックス講座|関連記事
もし「自分が買ったボードはシンタードベースと書いてある」という人は、ホットワックスもしておきましょう。といってもいきなり自分でワクシングするのは難しいため、プレチューンに出してしまうのが安心です。
上記は全国対応のプレチューンサービスの一例。こういった手入れをしておくと、シーズン中は滑走ワックスをかけるだけでOKです。
まとめと今回紹介したおすすめの板
このサイト「スノマガ」を作っている僕たちが「もし過去の自分にすすめるとしたら?」。絶対うまくなってもらわないと困るので、次のようなボードを選びます。
上手くなれる板の特徴- ディレクショナルボード
- キャンバーボード
- フレックスは柔らかめ
つまり、初心者向けのオールラウンドボードがベスト。以下の3本の板が最有力候補です。
いずれもキャンバーもしくはキャンバーベースのハイブリッド形状で、しっかり反発を使ってターンしていくことができます。
急げば型落ちモデルも手に入る!
K2のスタンダードとナイトロのデマンドについては、楽天とYahoo!ショッピングで去年モデルが販売されています。いずれも在庫はそれほど多くないと思われるので「なるべく安く板を買いたい!」という人は、ぜひチェックしてください。
去年モデルでも性能にはそこまで差はなく、税込・送料込3~4万円で手に入るのは魅力です。差額で4日分くらいのリフト券が買えそうですね。
長さによってはすでに品切れとなっているので「身長マイナス15cmくらいの在庫があった!」という人は早めに押さえてしまいましょう。