この記事では、
を解説しています。
「グラトリがうまくいかないんだよなぁ」という時は、「軸」を意識してみてください。
グラトリではふだんの滑りよりも大きく軸が移動しますが、それでも原則として両足のバインディング間から軸がはみ出すことはありません(注1)。
この記事では「軸」「目線」を中心に、具体的な体の動かし方をわかりやすく解説していきます。
まずはオーリーから練習してみましょう。
注1……プレス系トリックは例外ですが、それでも基本的にはバインディング外側あたりを狙います。
グラウンドトリック(グラトリ)とは何?
グラウンドトリックはスノーボードのスタイルの1つで、略してグラトリと呼ばれています。
- アイテムがない平らなバーンで手軽に楽しむことができる
- キッカーなどに比べて危険性が低く、フリースタイル入門にぴったり
- 滑走能力やバランス感覚を身につけ、パークやハーフパイプの基礎になる
つまり手軽にチャレンジできて、なおかつ本格的なフリースタイル系の滑りへステップアップできるのが魅力です。
そのため、グラトリは練習しておいてソンのないカテゴリーといわれています。
グラトリの種類をざっくり分けると2つに分類できる
グラトリを大まかに分類すると、
- スピン系トリック
- プレス系トリック
の2つに分類することができます。
また この2つを組み合わせたコンボができれば、グラトリで目を引くスタイリッシュなライディングが可能になります。
全てのグラトリの基本!オーリーとノーリー
スノーボードでターンをしている時も体重移動をする必要がありますが、体の軸は、前足と後ろ足のスタンス間から外に出ることはありません。
オーリーでは一般的に、ターンの時よりも大きく体の軸が移動しますが、それでも原則として軸が両足のスタンス間から外に出ることはありません。
この基本を押さえた上で、オーリーとノーリーに挑戦してみましょう。
基本のオーリーのコツ
オーリーでは普通のジャンプと違い、両足で踏み切りません。後ろ足で踏みきりながら前足を引き上げることで、テールの反発をうまく使って高さをだします。
オーリーの手順オーリーでは、低い姿勢で狙ったポイントにアプローチします。
低くなる時は上の写真のように、足首、ヒザ、腰をしっかりと曲げるように意識してください。 頭はできるだけボードの上からはみ出ないようにします。
「低くなろう」としすぎると頭が下がり「おじぎ」の姿勢になってしまいます。そうならないよう、各関節をしっかりと曲げるよう意識してください。
オーリーで飛ぶ瞬間は、上の写真の通り、低い姿勢から後ろ足で踏切りつつ、前の足を引き付けます。
この時、体の重心(軸)はやや後ろに移動しますが、後ろ足よりも外には移動しません。高く飛ぼうと意識しすぎると、重心が後ろに移動しすぎることがありますが、そうなるとバランスが崩れがちです。
飛び上がったら空中で両足を引きつけます。この時、板が雪面と平行になるようにしておき、ランディングに備えます。
ランディング時には足元を見ず、進行方向に目線を送ると安定します。
基本のノーリーのコツ
オーリーでは、テールの反発を使って飛び上がりましたが、ノーリーではノーズの反発をいかして飛びます。
オーリーとノーリーの体の動きで、一番違うのは飛ぶ方向。ノーリーでは「前方に飛ぶ」意識をもって伸び上がります。
ノーリーでは「前方に飛ぶ」意識をもちましょう。
それ以外はオーリーの動きを逆にするようなイメージです。
ノーリーの手順まず低くなってアプローチし、前足で踏み切りながら後ろ足を引き上げ、ノーズの反発を利用して飛び上がります。
ノーリーで飛ぶ瞬間は、上の写真のように前へ伸び上がるようにイメージします。オーリーと違って、ノーリーでは進んでいる板よりもさらに前に荷重しないと、ノーズの反発をうまく利用できないからです。
飛び上がったらオーリーと同じく両足を引き付け、板を雪面と平行にします。空中姿勢が安定し、ランディングにもあわせやすくなります。
ランディングでは進行方向に視線を向けておきます。
プレス系トリックで必要となる重心(軸)の作り方は?
プレス系のトリックを覚えると、これまであまり意識してこなかったスノーボードのノーズやテールを使った滑りができるようになります。
ただしノーズやテールを使うといっても、極端に重心(軸)をノーズの先端に移動したり、テール側に移動するということはありません。
プレス系トリックではバインディングのギリギリ外側に荷重
プレス系のトリックでは、この写真のように体の重心がバインディングの外に出るケースもあります。しかしそんな場合でも、軸をボードに対して斜めに突き刺すような感覚で、バインディング外側に荷重をかけます(上の写真参照)。
これより外側に軸をもっていってしまうと不安定になり、安定したプレスができません。
まずは平らな場所で、この荷重の感覚をつかむ練習をしてみてください。
特に初心者のうちは「バインディングのギリギリ外側に体重をかけて、板のしなりをいかしていく」という意識をもちましょう。
上級者の中には、より難しい軸で滑っている人もいます。
プレス系トリックの基本、BSノーズスライドをマスターする
プレス系トリックは種類が多いため、すべてを解説すると記事が長くなってしまいます。そこで、この記事ではBSノーズスライドをピックアップして解説します。
プレス系トリックの詳細なハウツー記事も掲載予定です。
BSノーズスライドのコツ
初めてオーリーからプレス系トリックに入る場合、オープンスピンからしかけるトリックがおすすめです。
オープンサイド=フロントサイドです。
常に前方がよく見える状態で技を完成させられるので、落ち着いてトライできるのがメリットです。
ノーズスライドのコツは、「ノーズに体重をかける」と考えるのではなく、逆に「テール側の足を伸ばす」と意識する点です
これは、先ほど解説したとおり、プレスした時のバランスが前足のバインディングから大きく外れないようにするためです。
体の軸を動かさずに、逆側の足をボーンする(伸ばす)ことでプレスの形を作れば、大きくバランスを崩す心配がありません。
BSノーズスライドの手順アプローチ時の先行動作はほとんど必要ありません。ただしどこでオーリーをして技に入るかはイメージしておきましょう。
オーリーをするタイミングで前の手を背中側に持っていくイメージで回転を作ります。
最初のうちは写真のように、ヒールエッジに乗った状態でボードを少し回してからオーリーしてもOKです。
目線は常に進行方向に向けておきます。
着地と同時に前足を蹴り出して、ノーズプレスの体勢を作ります。この時、板のノーズに体重がかかり、しなっている状態になります。
意識したいポイントは、頭が前足の真上にくること。頭と前足が直線で結ばれ、それがバランス軸になります。支点となる前足に無駄なくパワーがかかり、バランスが取りやすくなります。
微妙なエッジコントロールが必要です。両手を広げてバランスを取ると、コントロールしやすくなります。
この撮影の時、藤沼到プロはノーリー気味にレギュラースタンスに戻しました(レギュラーアウト)。逆に、そのままオープン方向へ180度板を回すと、スイッチアウト(to fakie)になります。
すべてのプレス系トリックで注意したい肩のライン
もう1点、注意したいのは「肩のラインを雪面と並行にキープする」というポイント。
どちらかの肩が下がるほど極端な体重移動をしてしまうと、バランスを崩しがちです。そこで特に最初のうちは肩のラインを雪面と並行に保ち、バランスを崩さない範囲内でプレスするようにしてください。
これはプレス系、マニュアル系、いずれのトリックにも共通するポイントです。
マニュアルはボードを縦にしてプレスするトリックのことです。スケートボードの技名に由来します。
スピン系トリックの基本となる180をマスターする
このパートではスピン系トリックの中で1番挑戦しやすい、ヒールエッジ踏切のフロントサイドワンエイティー(FS180)を練習し、次にバックサイドワンエイティー(BS180)を練習します。
スピントリックの回転方向を整理しておきましょう
スノーボードのスピン系トリックは、回転方向によってフロントサイドスピンとバックサイドスピンに分けられます。
レギュラーの場合フロントサイド回転は反時計方向(左回り)になります。 バックサイドスピンはその反対に時計方向(右回り)に回転します。
また、その他にもいろいろと呼び名があり、整理すると次の表のようになります。
レギュラーの場合左回転 | 右回転 |
---|---|
フロントサイド(スピン) FS オープンサイド | バックサイド(スピン) BS ブラインドサイド |
フロントサイド180は、FS180、オープンサイド180(オープン180)ともいいます。
また、バックサイド180は、BS180、ブラインドサイド180ともいいます。短縮してバック1と呼んだり、B1と表記することもあります。
一番やさしいFS180のコツ
グラトリで最も挑戦しやすいスピン系トリックは、FS180です。 FS180では進行方向を向いたまま、板の前後を入れ替えるだけでトリックを完成させることができます。そのため比較的チャレンジしやすく、まず最初に覚えたいトリックといえます。
なかでもヒールエッジ踏みきりのFS180の場合は、あらかじめ30~45度ほど板をずらしてから、残りの135度を回しきればよいため、かなり敷居が低いはずです。
FS180の手順FS180のアプローチでも、オーリーと同じく低い姿勢になります。この時も足首やヒザなどの関節をしっかりと曲げ、なるべく頭がボードの上からはみ出さないように意識してください。
アプローチから沈み込んだまま、テールを支点に30~45度ボードをスライドさせておきます。この時、前の手(レギュラーなら左手)を少し後ろに引いておき、スピンを作るためのタメにします。
オーリーの要領で踏み切りながら、左手を背中側へと先行させます。左手が先導する形で上半身の回転を作り、しかし、目線は進行方向を見続けます。
先行している上半身のひねりに、板がついてくる形でスピンが完成します。
ヒールエッジ踏切のFS180は回しやすいですが、デメリットとしては、着地が安定しないことがあげられます。
左手をそのままにしておくとボードが回りすぎてしまうので、着地と同時に左手をすばやく体の前面に戻します。
これによって回転を止め、ボードを安定させます。
着地した時はスイッチスタンス(フェイキー)になっています。
スイッチスタンス時に、レギュラースタンスと同じ感覚で体を正面に向けてしまうと、ボードがオープン方向に回転し始めます。そこで、レギュラースタンスと違って上半身を進行方向にひねらず、真横(もしくはやや後ろ)に向いたまま、肩越しに進行方向を見るようにします。
グラトリコンボを目指すなら押さえたいBS180
グラトリのコンボトリックではバックサイドスピンの動きからノーズでのボードスライドに入る、といった技の組み合わせ方は不可欠です。
そこで、余力があればBS180にも挑戦してみてください。
BS180の手順BS180では、FS180に比べるとはっきりとした先行動作はとりません。写真のようにやや低い姿勢でアプローチに入ります。
踏み切る直前、写真のように軽く頭を落とし、目線も雪面に落とします。
ただし頭を落としすぎるとバランスを崩してしまうため、あくまでも先行動作として必要な最小限の動きにとどめてください。
オーリーで飛び上がる時に腰から前へ飛んでいくイメージをもつと、うまくスノーボードを回せます。
藤沼到プロはまず上半身を先行させています。空中では、上半身につられる形で板が回転します。
ボードが回りすぎるのを防ぐため、BS180では着地をした瞬間、目線を後ろに送ります。空中でピークの高さが出た時点から下半身だけまわし、感覚で地面に着地を合わせていくイメージです。
うまく回しきれない時は、ボードが90度回転したピークの高さの位置から後ろ足を進行方向へ蹴り出す意識を持つと、しっかりと回転を作れます。
ボードが回りすぎる時は「目線を後ろに残す」、ボードが回りきらない時は「後ろ足を進行方向へ蹴り出す」と意識しましょう。
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グラトリは日本だけのダサい流行? 海外でのトレンドは?
確かに現在「海外でグラトリが流行している」という話は聞きませんし、海外でスノーボードをした時に、グラトリをしている人を一人も見かけませんでした。
しかしもともとグラウンドトリックは1990年代に北米ではやり始め、多くのトリックがその時点で考案されました。
その後、パークやハーフパイプの発展によって海外でのグラトリ人気は下火となりましたが、日本ではまだまだグラトリを楽しんでいる人がたくさんいます。
ダサいかどうかは個人の主観なので、特に気にすることなく自分のスタイルで楽しむのがスノーボードらしくていいと思います。
楽しく滑りましょう!
撮影協力・実演 藤沼到プロ
この記事の撮影には、片手複雑骨折中にもかかわらず藤沼到プロが協力してくれました。
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藤沼到プロスポンサー:NEVER SUMMER、GIRO、LEVEL GLOVES、POWCANT SYSTEM、PLATEPIA、PHYTOGRAM、ウルカ株式会社、関温泉スキー場、赤倉観光スキー場、マックアース
撮影協力
この企画は赤倉観光リゾートスキー場のゲレンデをお借りして撮影しました。積雪豊富な新潟県妙高市に位置し、初心者コースから上級者向けの非圧雪コースまでそろうコースレイアウトは、どんなメンバーででかけても満足できる充実ぶり。シーズンも長く、例年ゴールデンウィーク頃まで滑ることができます。
赤倉観光リゾートスキー場
電話: 01255872503
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