スノーボードの形状をざっくり整理すると、次のようになります。
上から見た形(シェイプ)ディレクショナル | 前後ろがはっきりしている |
---|---|
ディレクショナルツイン | ディレクショナルとツインの中間形 |
ツインチップ | 前後同じ形(前後対称な形) |
こういった形状は目的によって使い分けられることが多いため、記事後半では各形状の特徴と、向いている目的(滑り方のスタイル)を紐付けて解説していきます。
この記事は雑誌SnowBoarder元編集長の立石が制作しています。近藤勇二郎プロ、BURTON FLAGSHIP OSAKA、ヨネックス株式会社、株式会社ユーエスピージャパンなどに協力をいただきました。
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スノボの板の形状は2つの視点からチェック
この記事では、スノーボードを真上から見た形状を「シェイプ」と呼び、真横から見た形状を「ベンド」と呼んでいます。
シェイプは直感的に「それぞれ違うな」とわかるのですが、ベンドは一見するとわかりにくく、購入時にはスペック表で確認する必要があります。
ベンドはプロファイルと呼ぶ場合もあります。
上から見た形状=シェイプの分類
スノーボードのシェイプは主に3種類。ディレクショナルシェイプ、ツインチップが基本で、ツインチップ形状ながらスタンス(ビンディングを付ける位置)をやや後ろにずらしたディレクショナルツインというタイプもあります。
ディレクショナル
ディレクショナルシェイプは、前と後ろがある程度はっきりしていて、前向きに滑ることを重視しています。もちろんスイッチ(後ろ向きに滑る)も問題なくできますが、それよりも前に進むことを重視している、という感じです。
ディレクショナルシェイプのボードはバランスがよく、ある程度何でもこなせるので、初心者が初めて買うスノーボードにも適しています。
パウダー(新雪)を滑ったり、スノーボードスクールでしっかり基礎を練習したいという希望がある場合も、ディレクショナルシェイプのモデルにした方がいいかもしれません。
ツインチップ
前後が対象な形で、どちら向きにもスムーズに滑ることができます。スイッチライディングが必須となるグラトリ、パークなどのフリースタイル系に向いています。板の性格としては、遊びの要素が強いモデルが多いのも特徴です。
スイッチとは本来のスタンスと逆向きに滑ることで、フェイキーとも呼ばれます。
ディレクショナルツイン
前後対称のツインチップ形状でありながら、ややスタンスを後ろにセットバックすることで、フリーラン時の滑走性を高めています。ゲレンデのフリーランからパークやハーフパイプまで、幅広く対応できるモデルが多くラインナップされています。
グラトリ全盛の今だったら、初めての1本にディレクショナルツインの柔らかめのボードを買ってみてもいいのでは? と思います。
ほかにも少し特殊なシェイプがありますが、初中級レベルではあまり使わないため、改めて別記事で解説します。
横から見た形状=ベンドの分類
ここまではボードを真上から見たときの形について考えました。ここからは、ボードを真横から見たときの形状の話です。かなりたくさんのバリエーションがありますが、ここでは代表的な4つの形状を解説します。
キャンバー
もっともスタンダードな形状です。平らな場所に置いて真横から見たとき、ノーズ付近とテール付近の2か所で接雪し、まん中がアーチ状に浮いています。このアーチに荷重をかけたときにしなりが生まれ、高い反発力が得られます。
エッジがよく効くので、カービング性能が高い形状ともいわれます。
ロッカー
ボードのまん中で接雪し、ノーズとテールにかけて反りあがっている形状です。メリットは主に2つあります。
ひとつはパウダー(深雪)での浮力が得られること。もうひとつはエッジの引っかかりが少なくなり、初心者でも操作がしやすいこと。そのため初心者向けモデルに採用されることもあります。
フラット
イメージとしてはキャンバーとロッカーの中間。ロッカーよりもエッジグリップがよく、高速で安定します。メーカーにより「フラットロッカー」「フラットキャンバー」などとも呼ばれます。
どちらかというと上級者モデルに多く、初心者が選ぶことはあまりなさそうです。
ダブルキャンバー
足下に2つのキャンバーを配置したような形状です。キャンバーの反発力とロッカーの操作性を両立させるために考えられた形状で、取り回しやすくターンもしやすいのが特徴です。
初心者向けのモデルにもよく採用されています。
その他の形状
その他にもキャンバー、ロッカー、フラットを組み合わせたさまざまな形状があります。たとえばYONEXのACHSEなどは接雪する部分をフラットにしたイージーライド・キャンバーという形状を採用しています。
形状だけですべて判断できるわけではなく、メーカーはさまざまな要素を組み合わせて乗りやすい板を開発しています。
スノーボードの「スタイル」と板の選び方
スノーボードができるようになると「こんなこともやってみたい!」という目標ができます。やりたいこと別にボードを選ぶ時、ここまで見てきたスノーボードの形状が関係してきます。
やりたいこと | こんな板が向いている傾向あり |
---|---|
カービングをマスターしたい | ディレクショナルでキャンバー |
グラトリがうまくなりたい | ツインチップでロッカー |
ハーフパイプに入ってみたい | ディレクショナルツインでキャンバー |
絶対条件ではありませんが、こんな風に、やりたい事や滑りたいスタイルに向いている形状があります。
スノーボードには他にも、雪山を登って広大なバックカントリーを滑ったり、スピードを競う競技に挑戦するなど、さまざまなスタイルがあります。
これからいろんな滑りに挑戦したい人向けの板は?
我々普通のスノーボーダーがステップアップを目指すなら、オールラウンドボードがおすすめです。その理由は2つあります。
- オーソドックスなボードで、まずは基本をマスターする
- 最近のオールラウンドボードは進化していて、やりたいことは何でもできる
オールラウンドボードでターンやジャンプの基礎を身につけて、「これがやりたい!」という目標が見つかったら、それに特化したボードを探しましょう。
オールラウンドボードの形状オールラウンドボードにはディレクショナルまたはディレクショナルツイン形状のモデルが多く、キャンバーボードが多い傾向があります。フレックスは中くらい(ミッドフレックス)が多い傾向があります。
おすすめのオールラウンドボードここでは自由にターンできるようになった人が、よりライディングの幅を広げるためのオールラウンドボードをピックアップします。いずれも定評があるモデルです。
バートン(BURTON) カスタム(CUSTOM)
バートンのスノーボードはすべてカスタムを原型としている、といわれます。カスタムはそれほど完成度が高いオールラウンドボードということです。カービング性能も高く、ゲレンデを流すだけでも楽しめるし、パークやパイプに挑戦したくなった時も頼りになります。平野歩夢選手が北京オリンピックで使用したモデルとしても知られています。
キャピタ(CAPiTA) DOA
メーカー(カスタムプロデュース)の社員さんがおすすめしてくれたボードで、プロショップの間でも非常に定評があるモデルです。フレックスが硬いわけではないのにしっかり反発があり、カービング性能も高く、乗り手を選ばないボードです。
カービングターン上達を目指すならこの板!
圧雪されたゲレンデでターンを楽しみたい。とくに切れのあるカービングを楽しみたいという場合は、ある程度反発力があり、滑走性が高いボードを選びます。
カービングに強いボードのおおまかな傾向としては、次のような特徴があげられます。
カービングボードの形状カービングボードはディレクショナルシェイプでキャンバー構造のものが多く、フレックスは少しだけ硬めです。
おすすめのカービングボードここではプロ級の人ではなく、普通のスノーボーダーにも十分乗りこなせる機種の中で、おすすめをピックアップしています。
ヘッド(HEAD) パワーハウス(POWERHOUSE)LYT
これはかなりおもしろい板です。ソフトフレックスのカービングボードという、意外と貴重なモデルだからです。圧雪バーンで力まずにカービングでき、ジャンプもこなし、パウダーも得意としています。カービングターン上達を目指す中級レベルの人にぴったりの板です。
オガサカ CT
迷ったらCTといわれるとおり、ターンを中心とした性能は折り紙付き。長い歴史の中で磨かれてきたカービング性能は、テクニカル選手権で使用する選手が多いことからもわかります。
バートン PROCESS(プロセス)
BURTON FLAGSHIP OSAKA取材中、カービングボードとして意外な名前があがって驚いたのですが、このプロセスという板は「コスパの高いカービングボード」ととらえることができます。ツインチップですがキャンバーボードで、かなりオールラウンド性能が高いのが特長。オリンピックで3度も銅メダルを獲得した、マーク・マクモリスが使っています。
「少しフリースタイル寄りのカービングボードが欲しい」と思っている人におすすめです。
グラトリをメインに滑るなら?
グラトリ用のボードはソフトフレックスで、しかも反発があるという矛盾した条件を両立する必要があります。
たとえばソフトなウッドコアにカーボンビームをプラスして反発を確保するなど、設計にはさまざまな工夫が凝らされています。
また、グラトリ向けのボードといっても、理想は1つではありません。BURTON FLAGSHIP OSAKAで取材したところ、グラトリに適したボードを4つあげてもらえました。
トルネード・ウォーニング(Tronado Warning) | グラトリ用に開発したボード |
プロセス(Process) FV | オールラウンドボードのWキャンバーバージョン |
ネームドロッパー(Name Dropper) Rewind | ソフトフレックスで反発が大きい |
グッドカンパニー(Good Company) | ソフトフレックスでテンポは遅め |
純粋にグラトリを追求するならトルネード・ウォーニングになりますが、これからグラトリを始める人であればマイルドな反発のグッドカンパニーを選ぶといいでしょう。
また、フリーランの中にグラトリを取り入れたい人であれば、プロセスFVが向いているでしょう。
グラトリとの付き合い方によっても、選ぶべきボードが違ってきます。
おすすめのグラトリボードここでは、グラトリだけをやるのではなく、フリーランの中でグラトリも楽しみたい人向けのモデルをあげました。グラトリを中心に、どんな滑りもできるボードです。
バートン プロセス フライングV
オールラウンドな性能を持つプロセスを、フライングV(ダブルキャンバー)とすることで不用意にエッジがかかることを防ぎ、よりグラトリがしやすくなったモデルです。グラトリに挑戦したいオールラウンダー向けの板といえるでしょう。
デスレーベル ブラックフラッグDW
こちらもソフトフレックスのオールラウンドボードをDW(デスウイング=ダブルキャンバーに近いハイブリッド)としたモデルです。プロセスより柔らかく、さらにグラトリを重視するものの、オールラウンド性能も犠牲にしたくない人向け。初心者でも扱いやすいボードです。
ヨネックス アクセ(ACHSE)
カーボンというと硬いイメージがありますが、乗ってみるとまったく違っています。ヨネックスは、むしろ「フレックスを柔らかくしながら反発を強める」といった、技術的に矛盾する問題を解決するのが得意です。アクセも全体的にはソフトフレックスでありながら、ノーズとテールにカーボンリボンを配置することで、オーリーの反発力を確保しています(X MORE POP TIP)。
ハーフパイプに興味がある場合の板選び
ゲレンデを滑りながら「ちょっとパイプにも入ってみる」のは超おすすめです。ハーフパイプはフリーランの延長にあり、ハーフパイプができるとフリーランが確実に上達するからです。
ハーフパイプでは①ドロップしたあと②バーチカルで加速し、③ボトムではカービングで速度をキープしながら次の壁に向かうことが求められます。
そして④反対側のバーチカルに速いスピードで入ることで、高さのあるエアターンにつなげていきます。
ハーフパイプは究極の地形を滑っているとも考えられるため、板に求められる性能は、速くてカービングがしっかりできることです。
練習ならオールラウンドボードでOKここまで読んでわかる通り、ハーフパイプで求められる性能はオールラウンドボードやカービングボードの特徴に近く、実際オガサカのCTでハーフパイプのプロ戦に出ている選手もいます。
形状はディレクショナルツインのキャンバーボードが多く、フレックスはややハリのあるミッドフレックスが中心です。
ここからはオールラウンドボードの中で、ハーフパイプでよく使われるモデルを紹介します。
ハーフパイプにおすすめの板バートン カスタム
普通のスノーボーダーがフリーランの中でパイプにも入り、エアターンを楽しむとしたら、おすすめはオールラウンドボード。とくに、平野歩夢選手が使っているカスタムはその代表格です。
ヨネックス スムース(SMOOTH)
ヨネックスのチームライダーと開発担当が長年改良を続けてきたオールラウンドボード。ミッドフレックスで扱いやすく、カービングの切れもいいボードです。より硬いボードを使う選手が多い中、北京オリンピック日本代表の平野流佳選手はスムースで大会に出場しています。
シェイプ(形状)以外に気にしておきたい硬さと長さ
買うべきスノーボードを考える上で、どうしても避けられないのが「硬さ」です。ボードをねじったときの硬さをトーションといいます。
それに対してボードを上から押してみたときの硬さをフレックスといいます。
現在のスノーボードでは、ボードの部分ごとにフレックスやトーションが違っていたりするのですが、そのへんをまとめてざっくりと「フレックスが柔らかめ」かつ「トーションが柔らかめ」というモデルを選びましょう。
初中級レベルなら、ソフトからミッドフレックスがおすすめ!
レベルに応じた適切なフレックス・トーションのボードを選んだ方が上達が早く、なにより楽しく滑ることができます。
メーカーカタログなどで、適正体重も見ておきましょう。「初中級なら柔らかい方がいい」というのは間違いないですが、自分の体重やパワーに耐えられないほど柔らかいと、それはそれで滑りにくいからです。
長さは身長マイナス15~20cmくらい
ボードの長さに関して藤沼到プロが実演しながら教えてくれたのが「鼻とアゴの間くらいの長さを選ぼう」という基準。これはよくいわれることですね。
ただ、身長180cmの近藤勇二郎プロは「背が高い人はもうちょい短めでもいいのかな?」と考えています。勇次郎プロと同じくらいの身長の人なら、身長マイナス20cmくらいで考えてもいいでしょう。
逆に身長150cm前後の人であれば、137cm~139cmくらいをチョイスすることになります。さらに短い135cmのボードもありますが、全メーカーあわせて数機種程度です。
キッズボードは子ども用に設計されているので、大人にはおすすめできません。
NEWボードの「長さ」をより詳しく、そして「太さ」のチェック方法も解説した記事を作りました。以下のリンクから、ぜひ読んでみてください。
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